春の近い夏に通う?/吉岡ペペロ
 
がら夕日を見つめていた三郎は、いつものように、ひとことつぶやいた。

 三郎は、煙草を捨てた。そしてはっとした。
 三郎の吸い殻のすぐよこに、もう一本新鮮な吸い殻が落ちていた。
 そのコントラストで、二本の吸い殻が、骨片に見えたのだった。

 骨ちゃうよな、

 三郎は、吸い殻に顔を近づけた。もう一本の吸い殻には、うすく口紅がついていた。

 三郎はさっきのつぶやきを、もう一度くりかえした。

 骸骨が、坂道をくだる、

 そして、二本の骨片を見つめて、

 骨がなかったら、肉なんてバラバラや、

 そうひとりごちて、また歩きはじめた。
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