虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
 
ようにも見えたが、よく見ると触覚器らしきものが外気にもがくように、細かくさかんに蠢いているのがわかった。この得体の知れぬものが、果たして精巧な作り物だとはとても思えない。
 わたしが目撃したときには、すでに野次馬の人だかりと交通機動隊、および自衛隊員らが出動し、第一種低層住宅街の上品ぶった空を激しく、けたたましい騒音が朝を引き裂くように、陸上自衛隊汎用ヘリコプター(UH―1J)が旋回飛行をくり返していた。

 「危険です、近寄らないでください」
 と訴える警官を見下ろし、クレーンブームで持ち上げられたバケットの中の男が、
 「そこで卵を囲んだ自衛隊の人たち、かなり乱暴な仕方で野次馬を散ら
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