虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
しさに逆らって、むしろ明るいリビングの窓辺でソファに座ると、深煎りの素晴らしく苦いコーヒーを啜り、今にも時間切れとなりそうな激しい恐怖と苛立ちとを、半ば力ずくで捻じ伏せては叫びたくなる想いをやっと鎮めた。
「ドルの価値、まだ下がるのかな」
「だから少しだけ、金貨を買っておいたの」
そして新聞の記事をとばし読みしながら、サイドテーブルに妻が運んだ自家製オイルサーディーンとホウレン草のソテー 、目玉焼きと厚切りのトーストを一枚食べ、煙草を吸った。
ヤクルトを飲み、やがて妻に見送られて今日もゴミの袋を両手に持った。
いつものようにゴミを捨てた時、ふと気がつくと、生活道路と一般都道
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(9)