Mさん/戸森めめん
 
していると、
Tが*新調したテニスラケット*を自慢げにみせてくる。

 *新調したテニスラケット*

 黄緑色をしたグリップに、ブルーメタリックのボディーがつやつやと輝いていた。
 しかし、それを私が手にした途端、あちこちに傷が付き、色あせた。
 ガットはゆるみにゆるみ、伝線してしまう。
 私がその変化にびっくりして、ラケットをTに返すと、それは元に戻った。


もう少しで、自分の番、という時になって、雨が降る。
私たちは一斉に、ぼろぼろに錆びた簡易ベンチに逃げ込んだ。
空は青く、天気雨だが勢いは激しく、トタン屋根を叩く雨音は、隣人の声が聞き取れないほどだった。


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