ノート「序か跋か」より、みっつ。/秋津一二三
 
耳を澄ます。潮の満ち干きのように揺れている。重なり、響きあい、広がり、また重なり、繰り返していくうちに消えていく波紋。
 織り込んでばかりいては重くもなろうよ、ちいとばかし解いてみてはどうかね。それとも内なる澱に沈むかね。とか。
 少し遠くへ行けば気持ちも晴れるのだろう、きっと。風過ぎし道の皺でも数えながらいけば、そう遠くも感じないだろう。

 歩ける?と問われたら、歩ける、と答えるだろう。そして、歩かない、と続けるだろう。
 まだ、確かめたいことがあるのだ。まだ、何かに縋りたいのだ。沈んでも歩けなくなるとは限らないじゃない。間違っていないことは、とても素晴らしいことなのだろう。
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