ノート「序か跋か」より、みっつ。/秋津一二三
 
、という問いかけからはじまる空漠に耐えかねて、ありあわせの方程式に縋りつく。

 君に似合うものは沢山あるけれど、どれも買えないものばかりだったからと、笑った。けして広くない肩越しに、空、やがて海、敷かれていった光。

 不機嫌な同居人の声に、身体を起こす。相槌を打つようなごめんねが口癖になっている。捨てられたいのか、捨てられたくないのか。ずるいんだ、きっと。駄目になっていってるのがわかっていて、流れるままに任せてる。ずるくないわけないんだ。

 摘み取られて芽生えるあしたばの葉のように、あの人もたぶん、生きている。「あたし」のあずかり知りえない場所だとしても、きっと、生きている
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