オリオンの唄 〜 亡き友への requiem 〜 /服部 剛
昨日はヴァレンタインなんかじゃなくて
なんでもないふつうの日だった
誰にも言えぬ寂しさを
夜空に瞬く君にそっと打ち明け
月明かりのアスファルトに
猫背の影が伸びていた
はじめて車に乗った日
なんだかもっと
君と話したいことがあった気がして
なんだかすぐに
家に帰りたくない
あの頃の懐かしい気持になって
手持ち無沙汰なこころのままに
近所の川に架かる橋の欄干に凭れた僕は
西に傾くオリオンの
瞬く唄を聞いていた
その時僕ははじめて君に
( 馬鹿野郎・・・! )って
宇宙の果てまで響き渡る大声で
君の名前を呼んだんだ・
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