ふたりのはこぶね/あすくれかおす
「・・・わからん。ただ、俺も、同じようなこと、考えてた。
うまく言えないけど、あるものは、ずっとあるもんな。
新しく増えたものとか、無くなってしまったものもあるけど、
実は何にも、変わっていない気がするんだ。
うーん。
持っていきたいものは・・・。具体的には・・・とりあえず、これ、かな」
夫は茶碗と箸をかかげる。くっついたひじきがハラハラと落ちて、方舟候補から脱落した。
「ばかね。お茶碗の中身、もう空っぽじゃない。
あなたって、お茶碗だけ持ってって、あ、そうか、飯がねえな、って、ずいぶん後から気づくタイプなのよね。
きっと、神様に笑われる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)