ふたりのはこぶね/あすくれかおす
 




「・・・わからん。ただ、俺も、同じようなこと、考えてた。
 うまく言えないけど、あるものは、ずっとあるもんな。
 新しく増えたものとか、無くなってしまったものもあるけど、
 実は何にも、変わっていない気がするんだ。
 うーん。
 持っていきたいものは・・・。具体的には・・・とりあえず、これ、かな」


夫は茶碗と箸をかかげる。くっついたひじきがハラハラと落ちて、方舟候補から脱落した。


「ばかね。お茶碗の中身、もう空っぽじゃない。
 あなたって、お茶碗だけ持ってって、あ、そうか、飯がねえな、って、ずいぶん後から気づくタイプなのよね。
きっと、神様に笑われる
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