ふたりのはこぶね/あすくれかおす
れるタイプ」
何の変哲もなかったはずの私。
そんな私も、夫と出会い、過ごし、いつの間にか私という一人は、何の変哲もない、二人になっていた。
だから、たぶん私も、あ、ご飯がないね、だったら作ろうか。あ、ここって次の世界だったわ。ねえ、茶碗と、お箸しかないじゃない。
なんて呟きながら笑うのだろう。
「じゃあお前の、『家が方舟』案でいこう。
そしたら、ほら、ひじきご飯おかわり、できるよな。
よし、じゃあ後で、神さまに言っとく」
ばかね。
なーにがよし、言っとく、よ。ばかね。
久しぶりの雨は、今が冬で、音が冴えていて視点がさだまらなくて。
そして私たちが、何の変哲もない二人であることを思い出させる。
私はソファに顔を思い切りうずめて、小さく鼻歌をする。
そしたらお腹のなかに声が響いて、ああ、この音も方舟に乗っているのだな。
そんな心地がした。
そうだよねえ、ハンナ。
乗っているんだよね。
私たちと、落っこちかけたひじきと、あなたも、一緒に。
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