ふたりのはこぶね/あすくれかおす
 
滅びるのではなくて、雨によって浄化される。
不浄なものは運ぶことができないとするならば、何を持ってゆけばよいのだろう。


相変わらず私の焦点は合わないまま、「もくもく」だけが停止した世界の音に、話しかけてみる。

加湿器。
ハンナ・ヌーヴォ。

あなたたちは、新しい世界に、行ってみたいかしら?


私はもうしばらくぼんやりしてから答える。

「私は、この家が方舟であれば、それでいいと思う。
 ここにある色んなものは、ひょっとしたら次の世界に嫌われてしまうかもしれないけれど。
この家が、方舟なの。
私はなんだか、それが一番良い気がする。
・・・あなたは?」

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