福豆/かのこ
さんはもうパートに出ていた。
家の中は、小ぎれいに片付けられた居間の炬燵で猫が丸まって寝ているだけ。
仕事をなくしてから、2週間ばかり経つ。せめて家事くらい手伝おうと思うのに、いつもそうだ。
お母さんは、手伝え手伝えと言いながらも、一人で完璧にこなしてしまう。
家で何もできることがなくて猫と一緒に寝てると、自分の存在って社会で何か役立ってんのか、とか、考え出してしまうから、手伝いたいのはやまやまなんだけれど。
お母さん、いつも甘えてしまう。
今日は遅くまで働くお母さんのために、晩ごはんを作ってあげよう。
昼過ぎに、着替えて薄くメイクをして、近所のスーパーに出かけた。傘は持たない。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)