球体がある/パンの愛人
このような現状は、一面では平等主義の完全なる勝利であり、また一面では伝統意識を欠落させたアナーキズムの不完全なる勝利である。球体が、見渡す限り転がっている……、密封され、充足した球体が。いまや文化的インサイダーは消滅し、土地所有権を持たないかれらの長く険しい放浪の旅がはじまっているのである。
しかし、かれらはどこまで行けるだろう? かれらもミショーと同じく「動きを待ち構えている」のだろうか? 自分の内部に「決意と苦悩」というジレンマを抱え込んでいるのだろうか? 死に瀕していることへの危機感を持ち合わせているのだろうか? それどころかいまの現状にすっかり安住してしまっているのかもしれない。
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