『アクアリウムはエーテル日和』/川村 透
膝を腿をそけい部をなめくじの切実さで這い登り腰に手を廻し肩甲骨を抱きすくめ
うなじに息を二三度吹きかけると唇から深くゲルのように侵入し肺を満たし耳を触り
それからそれから額にキスを刻印してなおも高く高く、くらげ、みたいに頭蓋をゆすぶ
りながらつぶやきながら遠ざかってゆく、目を、閉じて。
僕たちがあそこからあそこへと戻ってゆく途中、懐かしい落陽を受け止める埠頭の
岸壁から海底まで貫いて生えている等身大の寒暖計じみた潮位計は
もうすでに大潮をとっくに越えて赤く細く高く高く、
いつの間にあんな高みに届いたのか
鼠色の後ろ暗い画像みたいに
頭の後ろでドキドキするような鉛色の、界面、とな
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