聖性、冬、機械/ケンディ
 
はただのたうち回る蝿だった。その時の彼の残忍でグロテスクな歪んだ目つきと表情は、私の中の蝿の遺伝子と共鳴していた。私の中に蝿の卵が蠢くという絶望的な恐怖に私は耐えられなかった。私は気が狂う寸前だった。
そんなときに彼が、私の目の前で突然自分の眼球をくりぬき出したのだ。その時、私の代わりにもしあなたが立ち会っていたとしたら、目の前で行われていることを完全に把握できなかったに違いない.そして後から、本当は拍手で祝福してあげるべきだったと悔いることだろう。なぜなら今回の件で彼は飛躍的変化を遂げたからだ。いってみれば量ではなくて質において。彼は常日頃から絶叫していた。今回の彼の叫びはいつもの叫びと音量的
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