聖性、冬、機械/ケンディ
 
量的には何も変わらなかった。近隣の住民は今回の彼の絶叫をいつものことだと思ったことだろう。だが、この絶叫の音質は明らかに違っていた。私にはよく分かった。
無限の苦痛。永遠に増大する吐き気。その中で、ただ果てしなく飛躍し続ける生命。これは忘我状態をもたらす。忘我状態にあった彼の眼前に現れたのは何だったのか。それは彼にしか分からない。
だが私に分かったことがある。彼の絶叫には熱烈な祈りが込められていたことが。絶対に見ることのできなかった、神秘的世界に飛翔しようとする聖者の忘我的熱狂が彼の叫びには込められていた。彼の絶叫の中に、私以外の誰が、静穏なグレゴリオ聖歌を聞き取ることができたか?つまり、吐き
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