明日香の旅路 /服部 剛
 
橘寺を後にした。
日本の遥かな歴史を遡る「大和ノ国」の風が吹く山郷
の旅路を歩き続けると、千三百年以上前の奈良時代と 
変わらぬ空に、雀等の群は小さい翼を広げながら旋回
し、私が歩む道先の柿林の枝々に舞い降りた無数の雀
等は、自らが音符の黒点となり、生きる喜びそのもの
を唄い、宇宙の合唱を一つに束ねて天に還していた。 
その情景を通り過ぎる私は、「日頃働く老人ホームに
いるお年寄りと職員や、自分が主宰する詩の夜の集い
が、それぞれに自分らしく生きる喜びそのものを奏で
るような「天の望む場」をかけがえのない人々と共に
つくりたい・・・」という一つの想いが、橘寺の蝋燭
の火のよ
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