明日香の旅路 /服部 剛
と、新たに迎える平成二十年という年を生きる恵みの
光が、胸の奥に泉のように湧いて来るのを感じた。
橘寺の堂内の奥に座る聖徳太子の像に手を合わると、
太子像の前に置かれた丸い金の鏡に、旅人である私の
姿が影のように映った。今年に賭ける思いを祈り、瞳
を開けた後、堂内の賽銭箱横の燭台に火を灯した私は
腰を下ろして坐ると、堂内の両脇には日蓮上人・円光
・一遍上人等・・・日本を代表する先人の像が並び、
左右の柱に一つずつの掛け軸が見えた。
「 和を以って貴しと成す 」
「 一隅を照らす者は国宝也 」
この二つの言葉を胸に納め、私は橘寺
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