めがね/柚木
ったのだ。
嫌がらせかって言うくらいの日差しと薄ぼんやりとした視界が見事に融合して、見たことのない、世界。
私の世界の間にいつも居座っていらっしゃったあのめがねというヤツ―そいつが、たとえ透明で薄っぺらなヤツだったとしても―そいつがいないだけで、私は本当の世界を見たような気分にすらなっていた。
そうだ、もしかしたら、あの、めがね、と言うヤツは、とてもとても悪いやつだったのではないだろうか。
あいつが私の世界を捻じ曲げて見せていたんじゃないだろうか。
昨日、アルバイトをクビになったのも、あと1つ単位を落とすと留年になることも、わたしが、あの、めがね、をかけていたからおきていた出来事なんじゃ
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