エトランゼの行方/パンの愛人
かれらに社会批判を可能にしたのは、社会へのめりこんでいく態度ではなくて、
逆にそこから一歩引いた視線を持ち合わせているという特質から来たものではないのだろうか。
これは求道的精神というのともまた違う。
ここで金子の「詩人」と題する散文を引用してみよう。
僕のやりたいことは別にあって、その機会は永久にのがしてしまった。
文学者や、芸術家でいくらえらくなってもしかたがない。政治家や、軍人でもない。商人でも、冒険家でもない。
僕はただ、絶代の美貌にめぐまれて、それが衰えぬ若さのあいだに死にたかったのだ。
それならば、恋愛すらも、不要だったのだが。
「絶
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