エトランゼの行方/パンの愛人
鳥はいないし まして人影はない
彼岸はいつも死の国のように静かである
ぼくは知っていた
夕日があかあかと上着の肩をそめ
世界を冷やかす月光がぼくの額を照らすのを……
マニラ郊外のドライブウェイを疾走しながら
ぼくは笑ったことがあった
雨のキールン港では
泣いたこともあったかもしれない
東京の街角では
ぼくはぼくである一切のものを否定するのだ
1948年 これは
レッテルでもなければ 絵皿の風景でもない
罪によってうまれ
憎悪と欺瞞と屈辱によって生活し
暗い夜明けのう
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