鬼の左手 (2/3)/mizu K
 
見か
牛でもあるまいに
それ、まじないか
或いは所在を知らせるものでは
人通りが多ければ役立つだろうが
しかしあの足は治るのか
何かのたたりでは
前世の報いでは
あの家は、げに、よくないことが起こる
何れにしろ
あのようなものを外に出歩かせるのは、
鬼を呼び込む

今朝は早くからひどく賑やかと思っていますれば、祭りのか
け声が聞こえてきて、この飢饉の跫に皆おびえているのに物
好きもいるものだ、やれやれと思いながらはたと気づけば、
今日は縁日でもなく、よくよく考えれば物音は聞こえこそす
れ、神輿衆の姿はどこにも見えず、隠(お)んでいるものの
姿は見えぬという、あな
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