鬼の左手 (1/3)/mizu K
ているものではない
人の心に巣食うのが、鬼だ
人の暗闇にらんらんと目を光らせ
祭りと政りの狂乱を眺め
歯を剥いてにたにた笑っている
飢饉ともなれば、鬼が大路といわず小路や町のすみずみまで
徘徊してまわる真昼の朦朧とした炎天下のなか、人の姿を装
い鬼の影を宿したものが、ゆらゆら、ゆらゆら、陽炎にうご
めくのです
もう幾度か宮の方角から白い煙が昇るのを人々は見ていまし
たので、もしやそろそろ雨ごいの願がかなうのではないかと、
朱けあかい西の空になにかしらの兆しがないかと、うつろな
瞳をむけているのです、また明日も焦げるような暑さがやっ
てくるのでしょうか
薄暗い
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