鬼の左手 (1/3)/mizu K
と鈴を鳴らす音、土
間の暗がりは徐々にその範囲を広げていくように思われ、終
にはその家の内部を覆ってしまう日も来るやも知れず、鬼の
目が破れ目からぎょろとのぞくから、ゆめゆめ目を合わせて
はなりませぬ、もし合わせたら、三日を待たずの宵のうちに
大路の大門の外に連れ去られて頭から喰らいつくされると、
母は脅すのです
水のない月であるから水無月というのか、もうひとしずくも
降らない日が何日も続いて日照り、もうじき疫病が流行りだ
すだろう、といううわさ、また病の発する我らが町の者たち
は洛外へ連れ去られて戻ってくることはないのでしょうか
鬼、鬼だ
鬼とは大門で待ち構えてい
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