食の素描#2/平
しょうを削る。
ナイフで切る。
一片をフォークで刺す。
口に運ぶ。
幸福が訪れる。
それは、私が持つ数少ない形式の一つである。
昨夜、あの夜の往来で別れた人々。
彼にはオタフク中濃ソースの、
彼女達にはマヨネーズの、
そしてマスターにはメープルシロップの。
それぞれの形式が、確かにあったのだろう。
そうして、その形式がそれぞれの生活において定まれば定まった分だけ、
異なる形式を目に耳にした時、激しい戸惑いと拒絶に襲われるのだろうと思う。
何故なら、その戸惑いを容認し、拒絶を受け入れた瞬間にこそ、
それまで自分を築いてきた自分だけの形式が瓦解するからだ。
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