食の素描#2/平
女性客はこちらを影としか認識していなかっただろう。
だからこそ、
びしょ濡れ酒塗れの姿でゆらり、とカウンターに近づいてくる影が人影だと
分かったとき、彼女達の笑い声と笑顔は瞬時に凝固した。
「な、ちょ、なにあんたら」
「…ズだと」
「は?」
「マヨネーズだとッ」
「びんぼくさいだとッ」
「キモすぎだとッ」
「卵に卵のソースかけて喰う方がよっぽどどーかしとるわこの悪食大伽藍共ッ」
「っ、な、何言ってんのよ卵に合うのは卵が一番に決まってんじゃないッ
塩コショウだソースだなんて何処の卑民よアンタ達ッ」
「ゆーにことかいてバルサミコだとッ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)