食の素描#2/平
は、お前と飲む酒も今夜限りと思え」
「有難い話だ。これで金輪際クソ不味い泥水を舐める必要がなくなる。
その前に払うものを払え」
「通る意味を話せ助六」
「これまでテメエと一緒に飲まなけりゃならんかった俺の精神的痛苦に対する見舞金、そして舌の上で泥汁と化した甘露達に対する慰謝料だ」
「何が舌だ笑わせる、髄液まで甘ったるい名古屋生まれの中濃オタフク中毒が」
「哀れなもんだな、乳の代わりに塩飲んで育った新巻鮭臭い北の先天性腎臓病みってのは」
「野郎」
「下衆が」
半年ぶりの久闊を叙すための酒の筈だった。
数ヶ月の空隙を言葉とグラスで満たしあい、
笑
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)