食の素描/平
るベストチョイスを繰り返しながら
食欲そのものを満たすことができる者。
それこそが、「朝のホテルバイキング」の、数少ない勝者となるのだ。
勝つ?負ける?一体誰に?
そんなことを自問する愚を行う暇など、
朝の食欲の前には存在しない。
ただひとつ言えることは、
自らの欲求の赴くままに料理を食い散らかし、
レストランフロアを後にする。
そのほんの数秒の間、後ろを振り向いてみるといい。
そのバフェメニューが素晴らしいものであればあるだけ、
喰い散らかした料理の残骸はひどく無残である。
そうして、その皿を片付ける黒のボウタイの視線は、
たとえようもなく冷涼である筈だ。
こ
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