食の素描/平
この朝のメニューは素晴らしいものだった。
質、量、フロアの凛とした爽快な空気。
すべてが、「朝」の幕開けに相応しいものだった。
だからこそ、私は挑むのである。
この素晴らしいバフェメニューを喫し、
昨夜の汚泥を洗い流し、これからの会議に立ち向かうために。
いや、違う。それは単なる表層の話だ。
このバフェに相応しいやり方でメニューを食いつくし、
自らの欲求を充実させ、「朝」を完遂する。
「朝」を完遂させるための形式を、
私はこのバフェの中から見つけ出す。
それが「朝のホテルバイキング」との、勝負の本質だ。
席を立ち、整然と陳列された料理の海の中へ、私は歩み寄る。
朝が、始まる。
*
「万物は崩壊する。崩壊は形式のひとつである。形式は万物為りや?」
(ーー吾妻滋郎著『認識の基地』末文より抜粋)
戻る 編 削 Point(0)