食の素描/
 

この朝のメニューは素晴らしいものだった。
質、量、フロアの凛とした爽快な空気。
すべてが、「朝」の幕開けに相応しいものだった。

だからこそ、私は挑むのである。
この素晴らしいバフェメニューを喫し、
昨夜の汚泥を洗い流し、これからの会議に立ち向かうために。

いや、違う。それは単なる表層の話だ。

このバフェに相応しいやり方でメニューを食いつくし、
自らの欲求を充実させ、「朝」を完遂する。

「朝」を完遂させるための形式を、
私はこのバフェの中から見つけ出す。
それが「朝のホテルバイキング」との、勝負の本質だ。


席を立ち、整然と陳列された料理の海の中へ、私は歩み寄る。

朝が、始まる。



「万物は崩壊する。崩壊は形式のひとつである。形式は万物為りや?」
(ーー吾妻滋郎著『認識の基地』末文より抜粋)


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