顔のない女/なかがわひろか
顔のない女の顔に
雑誌のモデルや
女優の顔を見ながら
僕は毎晩好みの女性の顔を描いた
僕たちは抱き合ったり
キスをしたり
僕のものをくわえさせたり
卑猥なことをして遊んだ
ある日僕は恋をした
僕は一人の女性を愛した
毎日その人の顔を見た
そして顔のない女の顔に彼女の顔を描いて
僕は抱いた
キスをした
性行為をした
時々女を連れて町を歩いた
きれいな顔に描かれた女を
皆が振り返る
ある時女と歩いているときに
彼女にばったり出会った
彼女は自分と同じ顔が歩いていることに
ひどく驚いているようだった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)