顔のない女/なかがわひろか
 


町のみんなも
どちらが偽物だと騒ぎ始めた

僕は彼女を困らせたくなかったので
急いで女を路地に連れ込んで
顔を消し
醜い顔を描いた

女は町の人から
醜い醜いと言われ
石を投げつけられたりした
そのうち女は町から出て行った

僕の愛した人は
以前から付き合っているお金持ちと結婚した

僕はまた醜い顔を描いた女を捜したが
女は町を出るときに
強姦に殺されていた

僕は一人になった

僕は一人になった

(「顔のない女」)

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