忌々しきは恋の凶事/錯春
 
のそれらしき羽虫の羽が浮き出していたのである
 僕は両親の寝室へと一目散に走った
 婚約が許されてからも、姉の背中はしばらく戻らなかった
 ケッタイなものだ
 だがそれは姉ではない
 すべての恋がケッタイな所為だ



 春志乃(はるしの)という女学生が、向かいの家に下宿をしている
 気立てが良い子だ、額も白いし髪も豊かで腰まである
 彼女とは近所のジャズ喫茶で出会い
 舞踏家大野一雄について大いに歓談したのが始まりである
 緑色が透けるような肌色をしていて
 その肌色は姉のカゲロウ羽を彷彿とさせたので
 まさか 君 虫になろうとしているのではあるまいね
 と
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