忌々しきは恋の凶事/錯春
 

 お湯を沸かすためであるらしかった
 何事も省エネ推奨される時代である
 致し方有るまい



 どうもこうも恋というものはまったくもっていいところがない
 僕が熱を出すのも、うたた寝から覚めると耳朶から花が咲いていることも
 すべては恋愛という凶事の所為である
 姉などは、今の旦那との結婚を反対されていた時期は
 爪は貝殻に
 舌は朱肉に
 髪はシルクに
 瞳は深海魚の如く深い灰緑色に変わったほどである
 ある夜、
 肩甲骨が痛いので確認してはくれまいか
 と不意に起こされたときは閉口した
 白々と月の光に浮き出したその華奢な肩と肩との中間に
 カゲロウのそ
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