ヤツカハギ/月見里司
 
僕がヤツカハギに出会ったのは
まだ子供のころだった
太陽がまだ高い時間に
あぜ道で一人になったりすると
山の向こうにぽよんと現れるなんだか大きいやつだ

1000メートルくらいある山なのに腰から上が全部出てて
目玉が大きくて
髪がちょっと薄かった

ぼんやり見上げていたら僕に気づいたらしく
 おおい
なんて話しかけてくるもんだから
おおい
とできるだけ大声で返すと
くすくす低い声で笑うので石を投げてやった
どうせ届かないし

ヤツカハギとはたくさん話をした
答案をドブに捨てているのを見られて
例の低い声でだいぶ笑われたり
(その時はいつもより力をこめて石を
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