ドリーはせせら笑う。/錯春
レスを纏い、煙管を吹かし、炎症を起こす関節に障らないように、いつも真紅のソファーに座っている。
ドリー。
ドリー。ドリー。
僕の世界は、僕の見えるところまでしかない。そう、宇宙も見えるところまでしかない。僕は火星人を見れなかった。
昔の偉い哲学者は言ったんだ。そのモノの存在を、姿を、鮮明に思うことができれば、それはもう存在しているのだと。
詭弁だろうか。
ドリー。
睫毛に、夜霧が玉を作って、星を映しているんだ。
僕はドリーに会ったことが無い。僕が会ったことがあるのは、真っ直ぐに立って、暮れていく夕陽に向かって吸殻を捨てるドリーだ。
吸殻は陽の光の逆光
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