ドリーはせせら笑う。/錯春
逆光を受けて、なのにその影は光に紛れることもなく、どこまでもどこまでも、いつまでもいつまでも暗かった。
あの吸殻が消えたら、
助かるんじゃないかって、そう思ったんだ。
ドリー。
もしかしたら、本当に君はあのドリーだったのかい?
君は2003年のバレンタインを境に姿を消した。テレビでは、誰もが
「かわいそうなドリー」
と言っていたけど、誰の目も涙をためてはいなかった。
あの日、泣いたんだ、僕は。
確かに泣いたんだ。
僕は、あの日を境に、何かが圧倒的に回転してしまったように感じる。
何も変わっちゃいない。
何も変わっちゃいないのに。
マーズ
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