突発即興詩会(7月31日深夜@会議室A)/ワタナベ
れた肌を刺す
「死ねなかったのかな」男は言った
「いや、多分死んだんですよ」と女
その証拠に湖のそこここには
二人と同じような恋人たちが
老いも若きも
震えながら抱き合っていた
男と男もいた
女と女もいた
女と馬もいた
馬と神もいた
「湖から出られないみたいだな」
「ずっと抱き合っていなければならないみたい」
年老いた恋人たちは震えながらも
くすくす笑いあった
爆撃機から投下された爆弾が
湖の周りの森を焼くと
わずかに熱せられた湖上では
生気を取り戻した恋人たちが
生前を思い出して交じり合った
ワタナベ
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