数多のあなた/ワタナベ
よろめきながら大学ノート全体に
四角い枠を描く
とたんに枠内は夕暮れに染まり
遠く稜線がたそがれてゆく
アリスはこちらを振り向き
シャープペンを軸にくるりと踊ると
手品のように消えた
大学ノートの余白には
「アリス」「稜線」の文字
間延びした声と
教室の外の青い空
だんだんよわく
真夜中の汀に
星々のまたたきが降りそそぎ
あわい波がうち寄せては
かなたへとかえってゆく
水平線から
ゆっくりと仰ぐ
とうめいな天球体の外側に
敷かれたレールと
さまざまに散りばめられた
みずがめや、わしや、こと
そして、白鳥座の傍を
列車が音もなく走ってゆく
そ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(24)