頂戴/錯春
 
 


 それでは、頂戴いたします。これを
 
 しっくい の如く真っ白くなった 破片を
 そっと手の平に乗せられて
 魔がさして ぐぐぐぅと
 手に力をこめた したらば 瞬時に粉々に
 なるわけがなかった
 まだこの破片の半分もこの世に存在していない私に
 それを押し砕くことなんて
 できるわけがなかった。
 考えればわかること それはいとも簡単に
 10年生きた木を 3年生きた蔓が 
 絞め枯らすことは できない
 そんな簡単なことを 解っているのに
 懲りずに 握って、何度も
 いつの日か
 あの暑い日
 飴みたいに やさしく 私にきづかれないように
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