頂戴/錯春
 

 そっと 溶けて消えた。
 破片は 私に忘れられるまで 私に優しかった。
 肉がなくなってからも優しかった。



 あいたかったカオリちゃん。
 すっかり丸刈りになった頭皮を剥きだしの そのまま
 虫みたいな線が 深く深く 縦断していて
 私は ぼろぼろ泣きそうになりながら
 今の医学は 奇跡を起こす と
 伯母が泣いている の を見た。
 彼氏のマサキ君とはウマクいってるの?
 大丈夫 問題ないよ お母さんこれ お見舞い?
 これ 頂戴
 私は
 カオリじゃなく
 彼氏も
 マサキじゃなく
 皆 ちがうのに ちがうよって
 もう強く言えなくて なん
[次のページ]
戻る   Point(1)