Pieta /服部 剛
 
暗闇に立つ
金の門を抜けると 
石段を下りた洞穴(ほらあな)に 
横たわる棺(ひつぎ)があり 
三日前に死んだその人は 
音も無く立ち上がる 

茨の冠を額に巻き 
槍に刺された血痕の脇腹と 
釘を打たれた両手を広げ 
穴をこちらに見せながら 
静かに瞳を閉じている 

その頃 
師を裏切って 
蜘蛛の子を散らすように 
逃げた弟子達は 
自らの卑弱な心に俯(うつむ)いて 
危険を逃れた隠れ家で 
互いの視線を合わさず 
それぞれに丸めた肩を
震わせていた 

( 出来の悪い弟子の私にさえ 
( うらぶれた町の娼婦にさえ
( 柔和
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