ミラーボールの夜 /服部 剛
仕事の後に
友のライブを見ようと駆けつけた
ライブハウスがある
渋谷・ホテル街
時折ぬるい夜風が吹いて
娼婦(しょうふ)の亡霊が通り過ぎ
地を這う鼠(ねずみ)が路地裏に滑りこむ
小路を抜けて
灰色の壁に埋め込まれた扉を開くと
階段下の地下に舞台があった
天井に揺れながら回る
ミラーボールが反射する床に
無数の光の粒は流れる
ギターを抱えた友は舞台に現れ
「ホームタウン」という
心に沁みる唄を弾き語るものだから
「こもれび」というカクテルを飲み
夕焼け色に染まった頬に
銀の涙が伝って落ちた
日頃の仕事を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)