せめて音のない世界で/雨露 流
 
喧騒と雑踏 賑やかな公園
ベンチに座る僕は 手持ち無沙汰
それでも一瞬を待っている そうたった一瞬を
手にはカメラ 黒光りする高級な一眼レフ
ピンとはすでに合わせてあって
その一瞬の訪れを気長に待つ


僕は割と名の知れた写真家


一瞬 それは希望に満ちた瞬間

澄んだ空にそよぐ風 鳥は翼を持つ宿命で空を飛んで
自由に形を変えるものだと思っていた雲でさえ
風に玩ばれているだけだと知った
それでも僕は浮かんでは消える思考を
流れる雲に重ねてる


ぼんやりと日向ぼっこ気分
でも僕には待ち望んでいる瞬間があって
それは希望に満ちた瞬間で それを切り取るのが
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