鉄塔を登る幽霊/錯春
をもたげる灯台が
毛羽立った水面の下から
長い睫毛をたゆらせながら こちらを見ている
鉄塔を登るのは 決まって涙で濡れた瞳
じゅうぶんに輝いていなくては足場はみえないから
風すらもたじろぐ衝動で 情動で
魚の骨と
植物の茎と
耐熱硝子に似ている
吹き零れていくにまかせて
空は
晴れているのを見たことが無い
少なくとも
私が君を待っている間は
待ちきれない 傘越しに灯台を睨む
チューインガムさながらに 噛まれ
吐き出されて 一瞥される
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)