幸福な女優/蔦谷たつや
 
幸福な女優は、金持ちの男を好んだ。
或る日のことである。
彼女は都内の高級ホテルで、大富豪のF氏と寝ようと試みた。
F氏は、83才。無論、機能しなかった。
―夜が明けた。

それ以降、彼女が、金持ちの男を好むことはなくなった。

幸福な女優は、知的な男を好んだ。
或る日のことである。
彼女は、都内の高級ホテルで、日本で一番偉い教授と寝ようと試みた。
教授は、何故だか、夜には、赤ん坊になった。
―朝が来た。

それ以降、彼女が、知的な男を好むことはなくなった。

幸福な女優は、頭の悪い男を好むようになった。
或る日のことである。
彼女は、都内の高級ホテルで、頭の悪
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