出棺の日/服部 剛
ーブルに置いた祖母と叔母と
三人は窓辺に並んだ
婦人が生前愛した
「乙女の祈り」が流れ始め
雲間から日は射して
窓辺に陽だまりが広がる
( 毎朝夫が出勤すると
( 婦人は大きく手をふり
( スーツ姿の背中を
( ずっと見送っていた
( 愛犬の太郎を傘で突っつく
( 帰り道の小学生達に
( 血相を変えて怒っていた
( 太郎が亡くなってからは
( やつれた顔で
( 夕方になるといつも玄関前で
( 頭上に舞い降りる烏達に
( 餌を投げ上げていた
「乙女の祈り」が終わると
遺影を抱いた初老の夫は
助手席に乗り込
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)