出棺の日/服部 剛
 
ーブルに置いた祖母と叔母と 
三人は窓辺に並んだ 

婦人が生前愛した
「乙女の祈り」が流れ始め 
雲間から日は射して 
窓辺に陽だまりが広がる 

( 毎朝夫が出勤すると 
( 婦人は大きく手をふり 
( スーツ姿の背中を
( ずっと見送っていた 

( 愛犬の太郎を傘で突っつく 
( 帰り道の小学生達に 
( 血相を変えて怒っていた 

( 太郎が亡くなってからは 
( やつれた顔で 
( 夕方になるといつも玄関前で 
( 頭上に舞い降りる烏達に 
( 餌を投げ上げていた 

「乙女の祈り」が終わると 
遺影を抱いた初老の夫は 
助手席に乗り込
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