詩集・人生の最中に/生田 稔
を流してみじかい長時間を費やす
偽名画をかかえ、とある大学構内を走れば
過去の夫人に出会う
俺は彼女とデパートをぐるぐるめぐり
お買い物の最中
はては主人留守宅に誘われ
うろたえて逃ぐるもおかし
夫人は晩餐の準備中
俺は窓から逃げ出す
どうもそうらしいのだ。
(以上三つの詩、20代のときのもの)
数日の去就
オーム貝に似し女子
夏の終わりの市場に見し
クロワッサンを齧る午後
クロゼミかしましく
日は暮れて読書する空に
時は過ぎて眠る頃
向うの部屋にランプほのあかし
ものうく聖書を閉じる
「わが友マキアベリ」
読まないかとすすめらる
「法の精神」今
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