詩集・人生の最中に/生田 稔
たサン・レミー・ポール病院
高い塀の中の庭
外に誰も訪れる者もないこの庭には
時折病人が庭に出ることを許されて
鉄格子の感触を体からはずし
自然の色と臭いとささやかな自由を吸う
これらの木々は植わってから幾年にもなり
此処に棲む、これらの木々これらの草は
塀の向うの仲間とは違うのだ
木の葉の色、花の彩
それらは何故かくすんで
病人たちの魂を吸って
ゆらゆらと淋しい自然を創っている。
公営屠殺業者
君らは知らないだろうが
私達の国には、たえず屠殺業者がいて
ふとした寒い日などに家を訪れる
トン・トン・トンとノックの音を聞けば
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