詩集・人生の最中に/生田 稔
ば
それが屠殺人なのだ
戸を開けば、白い長い手術衣を着た
彼ら二人が、つかつかと屋内にふみ込んでくる
屠殺業は公営なのだから
黙りこくって問いには答えない
しかも殺し屋と違って
いきなり、あの世へ送り込みはしない
必ず大きい黒カバンを手に持っていて
まずは一緒に来いと言う
いやだと言えば、大かい注射器を取り出して
目前でごついアンプルをカットする
液体はシュシュシュと泡を吹き
チューと注射器に吸い込まれ
その時には、私達は死を喜びつつも
瞬間だけを恐怖する
競馬馬のように安楽死させてくれるのだ
だから諸君はこの如き屠殺業者を憎むべきでない
直前には一言ぐらいやさ
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