詩集・人生の最中に/生田 稔
 
のです。」
「いつハカセになるのかな。
ハカセて何か知らないけれど、
きっと大金持ちのことだろう。
父がハカセになったら、
ロバを買ってもらって
乗るんだ。」

幼子は幼子の心
幼子は幼子のごとく考え

その日、すばらしい本を見つけた
市外電車に乗って
家路につき
電車の中で本をなくした
失くしたことしか覚えていず
惜しかったことしか覚えていない

すばらしい本だったことしか覚えて
いないあの本、そして
涙とともに思い出す
父のこと、母のこと、弟と妹を。

酔いて

酔いて中国の詩を読む
一月の午後
机上に酒瓶
書架に詩篇
キリストにつきて
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