詩集・人生の最中に/生田 稔
乙女藁の褥にすわりて,待つ
男にむかいて曰く
「なれは、正直なりせば、
望みのごとく、わが体与えぬ、
さあ・・」
男子ふと故郷にいる妻のこと思い出しぬ
乙女いう「なにゆえ臆するや」
男黙して答えず
おとこにまた眠けおこりて
座り伏す
目覚めむれば、一枚の紙切れ残しありかくありぬ
「汝れ、きっと妻子思い出でたに違いなし、
さあ・・妻子のもとに帰らせたまえ」
小屋をいずれば朝の光さし、男かなしくなりぬ
「あの乙女、誰やも知らじに,不思議なことなり。」
おとこ馬に乗りて立ち去りぬ
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